研究の背景

■流出重油
海面に流れ出た重油は、波により水と混ざりエマルジョン化・高粘度化し、沿岸に漂着すると残存性が高くなります。そうすると、自然環境に大きなダメージを与え、その回復には多大な時間と人手が必要となります。また地域経済に大きな影響と損失をもたらします。

■噴出ガス
海底石油生産システムにおける事故や活発な地震活動や海底地滑りにより、ガスが噴出すると、航行船舶や航空機、また自然環境に重大な被害をもたらします。

海底からの油・ガス流出

・いつ、どこへ、どれだけの油・ガスが海面に浮上するのか?
・浮上した油・ガスはどこへ流れ着くのか?
⇒海中の重油・ガスの移流・拡散情報と高精度移流・拡散予測が必要

海上での油の漂流

・重油を海上で回収⇒重油の現在位置情報が必要
・沿岸に漂着した重油の速やかな回収
⇒限りある機材を適切に重点的に予測配置することが運用上重要
⇒油の高精度漂流予測が必要

学術的課題

・マルチスケール(ガスハイドレートの生成・分解、油・ガスの移流・拡散)、マルチフィジックス(ガスの生成・分解に関する熱力学と動力学)の現象の実海域でのリアルタイムデータのセンシング

・予測のためのリアルタイムデータの融合によるシミュレーションの高精度化

研究目的

本研究は、船舶からの重油流出事故や海底の油やガスの生産施設からの流出事故に際し、油やガスなどの海底生産施設まわりの重油やガスのプルームの追跡を行う海中ロボットや、海面の流出重油を回収まで自動的に長期間に亘り追跡し、リアルタイムで情報を供給する複数の浮遊式浮流重油自動追跡ブイロボットに関する自動追跡システムを確立する。次に、ロボットから得られた油やガスの漂流位置、海象条件および浮流重油の性状に関するデータを使い、重油拡散シミュレーションの精度向上を図ることで、海底生産施設まわりの定期的な環境モニタリングを行うことや、流出重油の海上での回収や流出重油の漂流が予測される地域への適切な油防除機材の配置を行うことによって、革新的海洋防災システムへの展開を図る。
メキシコ湾、米ルイジアナ(Louisiana)州沖で爆発・炎上する海洋石油掘削基地Deepwater Horizon(2010年)
水深1522mからの総流出量は約78万KL
福井県三国町沖でのナホトカ号重油流出事故
(1997年)C重油6240KLが流出
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大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学コース
海洋工学講座 海事機械システム工学領域 加藤研究室
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