海上空港などの利用目的で考えられている超大型浮体式海洋構造物には、単純な平板状の「ポンツーン型」と多数の支持浮体で上部構造物を支える「コラム支持型」が考えられる。本研究は、これらのうち、コラム支持型に関連した流体力学的基礎研究である。特に、
  1. 浮体の平面寸法が大きいために、上部甲板の剛性が相対的に小さく、弾性体としての挙動が卓越する。従って流力弾性の問題として考えなければならない。
  2. 流体力の推定には、支持浮体(コラム)間での流体力学的相互干渉を考慮する必要がある。規則的に並べられた非常に多数の浮体群に対しても正確に計算できる方法を開発しなければならない。
 本研究では、弾性変位はいくつかのモード関数の重ね合わせで表し、各モード関数形に対する強制動揺問題の計算、および固定浮体に対する波浪強制力の計算には「階層型相互干渉理論」を新しく開発している。すなわち、いくつかの実浮体を取り囲む仮想浮体を考え、仮想浮体どおしの相互干渉を計算する。更に、いくつかの仮想浮体をまとめた、より大きい仮想浮体を考え、....のように、浮体群を「階層化」していくのである。各階層での相互干渉の情報は、ベッセル関数の加法定理によって上下の階層に伝えられる。この理論によって、数千本、数万本という浮体群に対しても厳密な計算が可能となっているが、従来の理論計算法では、計算機のメモリーの関係上、到底不可能なことである。
 右上図は理論展開に使っている座標系と記号の説明である。
 実験は、装置の制約などから4行X16列=64本の鉛直円柱群に対して行っている。 下図は、浮体列の長手方向センターライン上における波形を 16 ヶ所で計測した結果であり、理論計算結果と比較している。流体力学的な同調点付近では、非粘性の仮定に基づく理論値の方が大きく推定しているが、位相を含めた変動の傾向などは良く一致していると言える。

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