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10回海中システム研究会

 
第10回海中システム研究会 講演プログラム

 (2009年12月9日(水) 於.大阪大学吹田キャンパス)

 

第10回海中システム研究会 講演

13:0013:30

「海洋浮体構造物の係留装置点検システムの開発」 

田中 敏成 (独)港湾空港技術研究所 施工・制御技術部 計測・制御研究チーム

 概要: 国交省では港湾整備に必要な沖合波浪の観測を目的に日本各地へのGPS波浪計の設置を進めている。これらの波浪計の観測情報は気象庁にも提供され沿岸域の防災対策にも活用が期待できるものである。現時点ではこれらの係留装置は設計余裕等の観点から点検作業はなされていないが、中長期の運用ではその損耗が許容範囲にあることを定期的に確認する必要がある。本研究開発は,水中部無人で索の残存寸法計測を原位置で行う係留装置点検システムの実現を目的としている。ここではまず,画像計測機能と遠隔操作を支援する自律制御機能を導入した半自律型水中ビークルを利用して水槽試験機を構築し,模擬作業試験を実施して提案手法の有効性を示した。

 13:3014:00

「超音波による港湾鋼構造物の非接触肉厚測定」

吉住 夏輝 (独)港湾空港技術研究所 施工・制御技術部 計測・制御研究チーム

 概要: 高度経済成長期に大量に建設された鋼構造の港湾施設が老朽して問題となっており,効率的に施設の健全度を診断できる手法の確立が望まれている。従来は,接触式肉厚測定により得られた残存肉厚から診断しているが,港湾にある構造物の表面には海生生物が付着しているため,事前に除去する必要があり,作業効率悪化の主たる原因となっている。そこで著者らは,付着物を除去することなく高効率に測定できる非接触の手法を考案した。この手法では,超音波の多重反射に着目することで非接触測定を可能にした。測定原理に基づく装置を製作して,大型水槽,実海域において性能・運用試験を実施した結果,考案した手法が実用上有効であることが示された。

 14:0014:30

サンゴ礁海域での映像と音響測深による調査法について」

山本 啓之、古島靖夫 (独)海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域

 概要: マルチビーム測深ソナー(RESON社製,SEABAT8125)により石西礁湖の水深1-100mでの高解像度海底地形図を作成した。さらに海底地形図上のサンゴ礁の状況を調べるために小型ROVによる映像調査を実施し、サンゴ礁の被覆状態やサンゴ分布を計測する手法を検討した。測深データから構築した三次元地形図では、解像度10cmのレベルでサンゴマウンドによる微地形を識別できていた。小型ROVによる生物分布調査では水深50m付近においてミドリイシ,キクメイシなどの造礁サンゴが分布していることが確認された。音響測深と映像調査の組み合わせは、従来のダイバーによる目視観察と画像記録に依存した調査法では困難な広域調査を可能にすると考える。

 14:3015:00

「浮流重油自動追従ヨット型ブイの定常帆走性能」

   平塚 正拓 大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻・博士前期課程

 概要: 近年,船舶の座礁・衝突事故によって重油の流出事故が度々起こっている。重油流出による環境被害は多大なもので,こうした環境被害を最小限に食い止めるために浮流重油を監視するシステムの構築が提案された。現在,漂流予測シミュレーションと浮流重油自動追従ロボットの開発が行われている。わが研究室では,港湾空港技術研究所と三井造船秋島研究所と共同でSOTABSpilled Oil Tracking Autonomous underwater Buoy)という没水型の重油追従ロボットが開発した。しかしSOTABは,海上風速が大きい場合、海面を浮流する油を追従しきれないということが実験より判明した。このため新たにヨット型ブイの開発を提案する。このヨット型ブイが舵と帆の制御によって,浮流する油を追従していくことが可能かどうかを流体力計算によって求めた。計算から,定常状態で浮流している油の追従帆走が可能であることが分かった。

 15:00-15:30

休憩

 15:30-16:00

「ヒレ型アクチュエータを有する水陸両用ロボットの設計と開発」

   河村 嘉将 大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻・博士前期課程

 概要:自然海岸や干潟は沿岸域の海洋環境にとって重要な役割を担っており、定期的な環境モニタリングを行うことが望まれている。この作業を水陸の両方で活動可能なロボットにより行えば、作業の効率化が期待できる。一方、自然界ではウミガメのようにヒレを水中での運動のみならず陸上における移動手段として用いる生物が存在する。我々は、これらの生物のようなヒレ型アクチュエータにより水中・陸上の双方における活動を可能とする水陸両用ロボットを開発することで、水陸境界領域における環境モニタリングの自動化が実現できると考えた。ここでは、ヒレ型アクチュエータを有する水陸両用ロボットの開発の流れを中心に説明を行い、現在の状況を報告する。

 16:00-16:30

「人工鰭を装着したアカウミガメの運動解析」

磯部 雄一郎 大阪大学工学部地球総合工学科 

 概要:2008 年夏に紀伊水道で発見されたメスのアカウミガメ()は、発見される直前にサメに襲われ、前肢を両方とも食いちぎられていた。この悠の遊泳速度を測定した結果、両前肢が健常なアカウミガメの約6割しかなく、そのままの状態では海に返せないと判断し、日本ウミガメ協議会を中心に“義肢(人工ヒレ)”を作るプロジェクトを開始した。 本研究は、アカウミガメの前肢の運動に着目してその観察と解析を行い、健常な状態のウミガメ(照)の前肢の運動と、悠の前肢の運動を比較し、より健常なウミガメの運動に近づけるように義肢の改良に役立てることを目的としている。

 16:30-17:00

「地磁気情報を用いた長距離巡航型自律式水中ロボットの水中ナビゲーションの研究」

  加藤 直三 大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻

 概要:本講演は、大水深海域で中深度を航行する長距離巡航型自律式水中ロボットのナビゲーションの方法について論ずる。ウミガメなどの水棲生物が地磁気を定位情報として利用していることに着目し、地磁気情報を用いたナビゲーション方法の構築を試みた。具体的には、INS(慣性航法装置)と地磁気・海底深度情報を用いた定位法と地磁気・海底深度情報のみを用いた定位法の精度について、播磨灘と駿河湾を解析対象海域として、手法間の比較、海底傾斜、定位頻度、および潮流の影響について考察する。播磨灘では、地磁気計測を行い、全磁力図と海底深度図の作成を行った。シミュレーションによる検討の結果、潮流がある中では、地磁気・海底深度情報のみを用いた定位法が、INSと地磁気・海底深度情報を用いた定位法より、定位精度がよいことがわかった。