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9回海中システム研究会

 
第9回海中システム研究会 講演プログラム

 (2009年7月29日(水) 於.大阪大学吹田キャンパス)

 

第9回海中システム研究会 講演

13:00〜13:30
 1.和田 一育 海洋研究開発機構
 「南海掘削ステージ2について」


概要:「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(以下,南海掘削)は,科学史上初めて,海溝型地震断層に向けて掘削を行い,その岩石を採取し,その後長期データ観測を行う壮大な科学計画である。地震発生帯で,どのようにして地震や津波が発生するのか,そのメカニズムの解明が期待されている。2007年に行われたステージ1
(Exp.314,315,316) に引き続き,現在はステージ2 (Exp.319,322)が行われており,Exp.319は,科学掘削では初めてライザーを用いた掘削が行われている。今回の掘削では,ライザー掘削における水深の日本国内記録(2054m)を更新している。今後海底下1600mまで掘削され,試料(コアやカッティング)を回収する予定である。
ここでは,ステージ1の研究結果とステージ2の最新状況ついて紹介する。


 13:30〜14:00
 2.中村 昌彦 九州大学応用力学研究所
 「円盤型水中グライダーの実海域実験」

概要:近年全地球規模における環境変化の予測、環境保全に関する研究がますます盛んになってきている。これらの研究を行うためには地球環境に大きな影響を及ぼす海洋の時間的・空間的な観測データが必要であり、係留系による観測が広く行われてきた。ところが、係留系の設置にはその設計から投入まで多大な労力と費用が必要となる。このような問題点を解決し、観測対象海域において鉛直空間・時間連続データを取得するために、九州大学応用力学研究所ではバーチャルモアリング用円盤型水中グライダーを開発中である。第6回海中システム研究会では建造当初のビークル構成及び投入・回収方法について紹介させていただいたので、本研究会ではその後の実海域試験、改良点について報告したい。


 14:00〜14:30
 3.有馬正和 大阪府立大学大学院 工学研究科
 「UT'09参加報告およびOS「海中システム」・水中ロボフェス2009開催報告」

概要:本講演では,本年4〜5月に国内外で開催された海中システムに関連する学会・イベントの参加・開催報告を行う。まず,中国・無錫で開催されたUT’09(4月21日〜24日)では,水中ロボットや海洋音響,海洋観測などに係る研究発表と現在開発が進められている7,000m級有人潜水調査船の見学会が行われた。また,日本船舶海洋工学会春季講演会(神戸:5月28日〜29日)のOS「海中システム」では,昨年6月〜12月にかけて本研究会の「群知能海中ロボットシステムの調査研究」分科会で検討を行った調査結果の報告を含めて12件の学術講演が行われた。最後に,第3回水中ロボットフェスティバル(海上自衛隊阪神基地隊:5月31日)の開催結果について報告する。


 休憩

 15:00〜15:40
 4. 下谷 純一 高村 暢 大阪大学大学院工学研究科・博士前期課程
 「水陸両用カメ模倣型水中ロボットの歩行性能の評価と解析」

概要:自然海岸や干潟は沿岸域の海洋環境にとって重要な役割を担っており,この地域を保護していくために環境モニタリングが必要である。この作業を陸上から海中まで一体のロボットで行うことができれば効率的であると考え,水陸両用ロボットの開発を目指すことにした。スクリューやキャタピラなどによる移動方法では移動範囲が限られ,調査水域の環境を破壊してしまうなどの問題点が挙げられため、ロボットの移動機構としてカメの移動方法を採用することにした。歩行用マニピュレーターを製作し,それを用いてヌマガメ,ウミガメそれぞれの歩行動作を再現し,歩行性能実験を行った。一方、陸上(砂地)でのロボット歩行について、2次元個別要素法を用いた砂とロボットアームの干渉シミュレーションを用いて検討することにした。


15:40〜16:10
 5.加藤 直三 大阪大学大学院 工学研究科
 「アクアロボットを使った啓蒙活動」
 

概要:啓蒙活動の一環として、5月16日(土)10:00-17;00に、大阪大学工学部において、高専生を対象に、アクアロボットの工作教室を開き、さらに5月31日(日)の第3回水中ロボットフェスティバルでの競技会でのアクアロボット部門を開いた。参加者は、奈良高等専門学校から12名、神戸市立高等専門学校から4名、計16名であった。1セットあたり、4人で1チームを編成し、4チームで、工作を行った。競技会では、高専4チームが参加し、プールの仮底に、テープで周回コースを設置し、そのラインに沿って、自律的に泳がせ、競技を行った。


 16:15〜16:45
 6.山崎哲生 大阪府立大学大学院 工学研究科
 「海底熱水鉱床開発の進め方ー最近の情勢ー」
 

概要:2009年3月に策定された「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」においては,パブリックコメントの段階で,民間企業や学協会等から出た意見を踏まえて,(案)の段階にはなかった「早期開発を目指した」と「民間企業と連携を図りつつ」という文言が加筆された。これは,パイロットスケール採鉱実験の早期実施を通じて,技術的に世界のトップに立つとともに,統合システムの運用経験を積む方向へ,技術開発を進める取り組みへと大きく舵を切ったと解釈できる。また,補正予算では経産省295億円,文科省40億円という海底熱水鉱床関連予算が計上された。これらの最近の情勢について紹介する。