浮流重油漂流シミュレーション

 

2008年度 修士論文

題名:海洋モデルPOMと気象モデルWRFを用いたナホトカ号重油流出事故後の重油追跡シミュレーション

要約:近年、船舶の座礁事故などによって流出した重油による環境破壊が大きな問題となっている。このような被害を軽減するため、油を自動的に追跡し海洋データを送信するロボットと、数値シミュレーションを組み合わせた流出油の追跡・予測システムの構築が提案されている。そこで、本研究では19971月に発生したナホトカ号事故後の重油追跡シミュレーションを行い、実際の重油の漂着状況と比較し精度の評価を行った。プログラムは海洋モデルとしてPOM(Princeton Ocean Model)を、また気象モデルとしてWRF(Weather Research and Forecasting) modelを使用した。

まず気象モデルWRFの精度を評価するため、計算領域を日本海とした数値実験を行い風速の計算結果と実際の観測データとの比較を行った。数値実験における同緯度における経度方向の風速変化、同経度における緯度方向の風速変化、そして同緯度同経度の地点での風速の時間変化は観測値と良い一致を示し、気象モデルWRFの有効性を確認することができた。

次に気象モデルWRFの風速の計算結果を用いたナホトカ号重油流出事故後の重油追跡シミュレーションを行った。この重油追跡シミュレーションでは日本海の流動の表現に海洋モデルのPOMを使用した。そして重油追跡モデルにおける風速データの重要性を調査するため、解像度の粗い風速観測値を用いて行った計算結果(卒論時の研究結果)との比較を行った。さらに、重油粒子の水平拡散の影響を考慮するため、ランダム・ウォーク法をプログラムに導入した。このWRFの風速の計算結果を用いたシミュレーション結果は風速観測値を用いた場合の計算結果よりも実際の重油の漂着状況を精度よく再現することができた。また油濁防除作業を効率的に行うため、重油粒子の密度分布の計算を行い、可視化した。この重油粒子の密度分布の比較においても、シミュレーション結果は観測結果と良い一致を示した。

公表論文

1.Youhei Mukumoto, Naomi Kato, Yuichi Miyajima、” The simulation of spilled oil drifting after Nakhodaka accdident using Princeton Ocean Model(POM)” AMEC2008、 Chiba,Japan

2.椋本洋平、加藤直三、 海洋モデルPOM気象モデルWRFを用いたナホトカ号重油流出事故後の重油追跡シミュレーション、 日本船舶海洋工学会講演会論文集 第8号 pp.33-36 2009.5