メゾコズム海洋実験の生態系シミュレーション

論文概要 Summary
平成19年度 修士論文    宮島雄一

近年赤潮による漁業被害が問題となっている。そこでデータを自動送信する水中ロボットと、数値シミュレーションを組み合わせた海域の総合監視システムが提案されている。しかし、赤潮のメカニズムはいまだ解明されておらず、明確な定式化がされていなのが現状である。そこで本研究では赤潮発生のメカニズムを解明するため播磨灘海上で行なわれたメゾコズム海洋実験の生態系シミュレーションを行った。

 メゾコズム内の生態系を表現するにはメゾコズム内の流動を表現することが必要不可欠である。そこでまず、流動シミュレーションはMEC modelFull-3D modelを用い計算を行なった。メゾコズム内には鉛直循環装置が存在し、シミュレーション内に吹き出しと吸い込みを配置し鉛直循環装置を表現した。その結果、メゾコズム内にある鉛直循環装置付近のみ流速が生じた。メゾコズム内の流速の計算値をFig.1に示す。鉛直循環装置付近の流速計算値は実測値とほぼ同値であった。さらに水温と塩分の計算値を実測値と比較した結果ほぼ一致し、流動モデルの精度を確認することができた。

 さらに本研究ではMEC modelecosystem modelを基にした生態系モデルを作成し、メゾコズム内の生態系シミュレーションを行った。まず植物プランクトンと動物プランクトンをそれぞれ1種類ずつ考慮したシミュレーションを行い計算値と実測値を比較した結果、栄養塩は実測値と同じように成層化を表現することができたが、プランクトンの値は実測値より小さな値となった。

そこで、新たに3種類の植物プランクトンと2種類の動物プランクトンを考慮したモデルを作成し計算を行なった。メゾコズム内の渦鞭毛藻の計算値をFig.2に示す。その結果栄養塩、渦鞭毛藻の分布は高い精度で表現することができたが、珪藻の値が実測値よりかなり大きな値となってしまった。これはモデルに珪藻の増殖に影響を与える珪素が考慮されていないためであると考えられる。 

今後その珪素の影響、さらには植物プランクトンの日周鉛直運動の影響を組み込んだモデルを構築し計算を行なう必要があると考えられる

Fig.1. メゾコズム内の流動            Fig.2. 渦鞭毛藻の計算結果