海を知る

現在の海は地球誕生から3億年余り後、約43億年前に誕生しました。地球表面の約7割を占め、海水の量は縦横2000km、深さ337kmのプールにようやく収まる程です。深いところは水深1万1000mにもおよび、高圧暗黒低温の極限的環境が広がります。しかし近年、地球生命系の複雑なシステムが次第に明らかにされると共に、海は人類が直面する地球環境や食料資源問題などに深く関わることが分かってきました。海を知ることが、私たちの未来にとって極めて重要な意味を持つことが理解されてきたのです。43億歳の海に比べれば生まれたばかりの人類にとっては、海へのアプローチは始まったばかりで、限りなく奥深いものです。それだけに、フロンティアスピリットあふれる領域といえるのです。

提供:JAMSTEC

海はキャンバス

最近のクルーズ客船の建造には目を見張るものがあります。10万トンを超える大型船が続々とカリブ海や世界一周などの航海に就いています。日本の造船所でも、世界最大級の11万トンの客船を海外の船会社用に建造しています。このような客船は、船そのものが世界中の人々を魅了する商品価値を持つことが重要で、デザインがセールスポイントになります。ですから設計には高い美的センスが求められるのです。外観、船内とも非日常的な空間が演出され、時代時代のデザイントレンドを目にすることができるわけです。船を大海原へ送り出すのは、海という青いキャンバスに筆を入れるのと同じ。船造りは、単に機能の追及だけではないところに、魅力とロマンがあります。

提供:池田良穂

提供:Odd Faltinsen

無限の可能性

四周を海に囲まれたわが国の社会経済活動は海上交通・輸送なしには考えられません。また、その他にも環境への影響が少ない浮体式海洋構造物を利用した、海上空港や物流ターミナル、海底資源・エネルギー基地などが考えられています。また、将来、わが国のエネルギー需給は逼迫すると言われている中で、石油・原子力に替わるクリーンエネルギーとして洋上風力発電、海洋温度差エネルギー、波力・潮力エネルギーに加え、メタンハイドレードなど海底資源の利用が考えられています。

提供:(独)国立環境研究所

提供:メガフロート技術研究組合

七つの海を翔る

私たちの身の周りには海を渡ってきた物がどれほどあるでしょう。例えば、私たちの食卓は海外からの食べ物が60%を占めています。国内で生産される食べ物も、肥料や加工に費やされるエネルギーは輸入に頼っていますから、その割合はさらに高くなるでしょう。食糧生産だけでなく、他の産業にも無くてはならないエネルギーは海外に頼る割合が80%にも達します。必要な資源やエネルギーを運ぶ海運は、私たちの暮らしを支える大切な社会資本なのです。大海原に道路や線路はありませんが、それに代わる沢山の船が七つの海を翔け巡っているのです。

提供:JAMSTEC

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究極の省エネ輸送機関

原油を満載した全長300m、幅60mを超える30万トンのタンカーは3万馬力のエンジンで走ります。これは原付スクーターで50トンの貨物を牽引することに相当します。船がいかに効率良く物を運んでいるかが分かるでしょう。もっとも海水の大きな抵抗の中でこの省エネ効果を実現するには、最先端の流体力学と構造・材料力学に基づいた、低抵抗船型と超軽量船体構造の開発が必要でした。長期間単独で活動する船や海洋構造物は、一つの都市に匹敵する機能を包含することが求められます。ですから設計では、さまざまな要素が全体のシステムの中で果たす役割を常に意識する、総合的な思考能力が要求されます。船舶・海洋工学で、応用力学の深い知識と実践的エンジニアリングセンスを身に付けられるといわれるのは、そのためです。

提供:ユニバーサル造船

提供:今治造船

海洋観測のすすめ

地球温暖化をはじめとした気候変動と海洋は深く関連しています。海洋の動きは大気に比べて穏やかですが、膨大な熱量を蓄え海流で輸送し大気の状態を支配しています。また、温暖化の問題では海洋の二酸化炭素吸収量を知らなければ、正確に温暖化の度合いを推定することはできません。このように、地球環境を支配する海洋の状態を常に観測することは非常に重要ですが、広大な海洋を隅々まで調べるのには膨大な費用がかかります。そこで、安価な無人観測装置や人工衛星・潜水ロボットを利用した観測装置を開発することが考えられています。

提供:JAMSTEC