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株式会社三井造船昭島研究所 池田 剛大さん 2009年 大学院前期課程修了

私は、平成21年に地球総合工学科目 船舶海洋工学専攻の博士前期課程を修了し、株式会社三井造船昭島研究所に入社しました。入社してやっと一年が過ぎたところで、まだまだ知らないことも多いのですが、これまでに経験したことを振り返りたいと思います。

その前に、この昭島研究所について少しご紹介したいと思います。昭島研究所はもともと三井造船株式会社内のひとつの研究所としておよそ30年前に東京都昭島市に設立され、後に三井造船の子会社として分社化しています。

昭島研究所にはさまざまな施設が整っています。水槽設備で言うと大水槽・小水槽(「小」といっても大阪大学にある長水槽と同じくらいのサイズです!)・潮流水槽・回流水槽・キャビテーション水槽など多数を備えており、試験で使う模型船を作る工場も備えています。

私が所属している部署は船舶性能開発室という部署で、ここではおもに船型や省エネ装置、プロペラの開発・検討を実験や数値計算を駆使して行っています。その中で私はおもに「波浪中の抵抗増加」をメインに取り組んできました。「波浪中の抵抗増加」というのは船が波の中を走ったときに、波が無いときと比べて抵抗が増えるということを指します。この分野は近年注目されてきている検討項目なのですが、その背景には次のようなことがあります。従来、船の性能は波や風がまったく無いいわゆる「平水中」で保証されています。しかし実際には船舶は風や波が存在する場所で運用されます。さらに近年、二酸化炭素の排出量削減が国際的に叫ばれていますが、船舶についても例外ではありません。二酸化炭素は燃料を燃したときに排出されるため、波や風が存在する海で今までより更に燃料消費の小さい船が必要とされつつあります。

右の写真は小水槽での波浪中試験の様子です。研究所には計測のプロの方もいるので、現場で新米の私ができることはお手伝い程度しかありませんでしたが、特別ほかに急ぎの仕事がないときには小水槽に張り付きになっていました。確かに、試験結果そのものはもちろん重要ですが、結果だけでは見えてこない現象を現場で観察し、実際に何が起こっているのかを見て次の開発に生かすということも大事だと上司から言葉をもらい、実践しています。


波浪中試験の様子

CFD解析の例

船型試験の様子

海上試運転にて

さて、部署の一番の仕事は船型開発です。まず数値流体力学(CFD)や理論計算・過去の実績を考慮して検討を行い、次に模型で船型試験を行い、その結果を踏まえ、改めて開発を繰り返し、目標を達成したところで船型が決まります。それをもとに工場で工作用に設計図を描き建造した後は、まず船がお客様と契約した性能を発揮できるか海で試験を行います(海上試運転)。海上試運転では機器類のチェックなど様々な試験が行われます。その中に船が契約したスピ-ドを出せるか確認する試験(速力試験)があります。私の部署はその試験の担当でもあり、模型実験や計算の検討で達成できた目標を、実船でも達成できているか明らかになる緊張の一瞬です。左下の写真は夏に参加した海上試運転での一枚です。やはり実際の船のスケール感には圧倒されます。今回の海上試運転は大型の船だったため泊まり込みで数日の日程で行われましたが、海のど真ん中、周りは真っ暗の船上で見る星空も感動的でした。

大阪大学の船舶海洋工学科/専攻出身の諸先輩のお話を聞くと、造船会社だけでなくいろんな業種の方から大学で学んだ知識が今活きている、ということをよく耳にします。もちろん、私の場合も造船学科出身で造船会社の研究所に勤めていますので、大学で学んできた知識を利用できる範囲は他業種に比較すると広いと思います。しかし私自身の反省として、まだそれらの知識を十分に生かしきれてはいない、と感じています。学生時代は何かを勉強・研究する時にはただ「学問」としてしか認識していませんでした。もちろん学問として突き詰めるのも大事なことですが、実際何らかの問題に直面したときには、「昔に勉強したことがあるな」という記憶が出てくるだけで、とっさに思い出して使えないことが往々にあります。この私自身の反省としても、学生の皆様には何か勉強・研究しているときには、ただ「優・良・可(・不可)」だけを考えて取り組むのではなく、「あっ、これはこの分野で使えそうかな」などと、難しいかもしれませんが使えそうな場面をイメージしてほしいと思います。

ここまで、一年間で経験したことや今になって痛感していることをとりとめもなく記してきてしまいましたが、本ページが少しでも皆様のお役にたてれば幸いです。